さて、今回は『後継者不足の大工業界』というテーマで話していきたいと思います。
なぜここで建設業界ではなく、大工業界なのかというと、土木業界は大工業界よりも若い職人さんはいくらか入っているという情報を得たのと、僕自身大工業界以外の経験が無いので、今回はあえて大工業界に絞って話を進めていきます。
僕の肌感での話となりますが、今の大工さんは大きく2つに分かれており、ハウスメーカーの建売住宅を主戦場とする大工さんと、リフォームを主戦場としている大工さんに別れています。
若い職人さんは数をこなすことができるのでハウスメーカーでの新築、年配の職人さんは技術や知識を要するリフォームといった構図になっています。
今まではハウスメーカーとリフォームをする職人さんとで、パワーバランスを保っていましたが、東日本大震災の時に踏ん張ってきた年配の職人さんたちは次々に引退していき、リフォーム業界の第一線で働いている50代、60代の職人さんもあと10年、15年と仕事をしていくのは難しい。なによりこれからの新築需要も、土地の高騰や、物価上昇により今よりも家を買うという選択肢のハードルはかなり上がると感じます。
また、家は建てて終わりではなく、長期的に住み続けるためにはメンテナンスも必要であり、近い将来リフォームができる大工さんが減るのは目に見えています。
リフォームは経験がものを言い、教科書通りのやり方が通用しないことがほとんどです。
ハウスメーカーをやっている大工さんから聞いた話ですが、「新築とリフォームはまるで別物。手取りが倍貰えるとしても、リフォームは手を出したくない。」
と、言っていました。
若いときは、新築で数をこなせば大きな収入になりますが、年齢と共に体力の衰え、スピードも落ち、そうなった時に簡単に切られてしまうのが、一人親方としてやっている職人さんの弱さだと思います。
身体がバリバリ動いて、頭の柔軟性がある若いうちにハウスメーカーの仕事だけではなく、リフォームの仕事をしておくと将来的に困らないのではないかと常日頃思っています。
僕は、平成5年生まれの30歳です。
建設業界ではまだまだひよっこですが、一般社会だと上の立場に上がる年齢であり、スポーツの世界だとプレイヤーとしてあと数年しか稼働できない中堅からベテランと呼ばれ始める年齢です。
この年齢である程度大きな責任を背負う立場になったのはとても大きな経験であり、その経験や知識、技術を次に繋ぐために、まだまだ勉強中です。
良くも悪くも、プレカットが主流となった今、家を建てるコストは減った反面、墨付けという棟梁の技術は失われつつあります。もちろん、今の情勢を考えるとそれは正しい選択肢のうちの1つだと思う反面、大工さんとしての技術を磨く機会が減っているやうな気がします。
この大工さんとして刃物を使う技術が途絶えてしまうのか、それともこれから先も続くのか。
それはこれからを担う僕たちが後継者不足という問題に向き合っていき、頭の中にあるアイデアをカタチにしていきながら色々な経験を踏んで、これからも建築に関わらず色んなことに挑戦していきたいです。